開発者インタビュー Vol.3
"一人で限られた時間の中で開発するには、とにかくスピードが命で、多少残念でも一発勝負で書き上げるなど、今思いおこせば無茶苦茶な作業をしていたことを思い出しました"- ジーノ

 

Isao:

今回は日本のスマートフォンゲーム『SOULVARS』の開発者である、ジーノさまにインタビューをお願いさせていただきます!『SOULVARS』は皆さんご存知のドラゴンクエストやファイナルファンタジーなど、それらと直近でセールスランキング10位以内で肩を並べる超人気ゲームアプリです!さっそく作品の開発秘話などをお聞きしたいと思います!本日はどうぞよろしくお願いいたします!

 

ジーノ:

いつもお世話になっております、改めまして個人ゲーム開発者のジーノと申します。本日はよろしくお願いします!

 

Isao:

まずは早速ですが、2022年1月8日にiOS&AndroidでリリースされたRPGアクションゲーム『SOULVARS』について、 簡単にご紹介いただけますでしょうか?

 

soulvars screenshot

ジーノ:

『SOULVARS』はダイナミックなドット絵アニメーションと、現代を舞台にしたハードボイルドなストーリーが特徴的な、じっくりやりこめる新感覚システムのデッキビルドRPGです。奥深い戦略性を持ちながらも、縦持ちスマホ操作でシンプルかつ爽快感のあるバトル、育成、ダンジョン探索が楽しめます。 近年主流となっているソロのローグライクなデッキビルドゲームとは異なり、最大3人のキャラクターで構成されるパーティバトルを楽しむことができ、ストーリーベースで進行する王道のRPGスタイルを踏襲しています。

 

Isao:

何といってもテンポよく繰り広げられるオリジナルのデッキバトルが魅力的ですね!様々な種類のカードのようなもの(ソウルビット)を選択して、サクサクとテンポよく展開していくのがめちゃくちゃ気持ちいいです。この洗練されたバトルシステムの開発には、ゲームプログラミングにおいて色々な試行錯誤が繰り広げられたのだなと、本当に感じさせられます。バトルシステムだけでどれくらいの開発期間を要したのでしょうか?

 

gif

 

ジーノ:

開発期間は全体で3年程度ですが、本作の肝となるバトルシステムの構築には、スクラップ&ビルドを繰り返し、おおよそ1年を要しました。リリースぎりぎりまで調整を行なっていたので、バトルシステムにおいては開発の最初から最後までずっと手を加え続けていたように思います。 特にバトルシステムではまだまだ詰め込みたい要素がたくさんありましたが、開発中こうしたら面白いかな、というアイデアが次から次へと溢れてきて、それをダイレクトに実装することを繰り返す作業はとても面白い反面、終わりが見えなかったので、泣く泣く仕様を落としたものがたくさん存在します。

 

Isao:

開発中に次々と色んなアイデアが浮かんできて、実装したくなるのは、よくありますよね(笑)ボツになってしまったバトルシステムの要素もとても気になるところです。 キャラクターのドット絵の動きやクオリティも世界観が本当に統一されていってかっこよかったです。ユーザーインターフェイスも独特な黄色を使っていて、オリジナルのフォントを採用されていらっしゃいますね。インディーゲームにオリジナルフォントを用いるのはまだまだ珍しいケースだと思いますが、どのようなこだわりを持たれていたのでしょうか?

 

 

ui

Gino :

もともとヘタの横好きで始めたドット絵をインタラクティブに動かしてみたいという思いがあったため、開発しながら必要なグラフィックをゴリゴリ描いているうちに自然と少しずつ上達していった感じはします。背景などもかなり適当な素人仕事すぎて恥ずかしいですが、それっぽい世界観は演出できているのかなと思っています。

プログラムは主に夜寝る前の数時間机に座って書きますが、グラフィックは風呂にはいっているとき(スマホをジップロックにいれて)、寝る前に布団に入っている時、電車での移動中などに書くことが多かったです。また、プログラムを書いている途中に、その都度必要なグラフィックの微調整(あと1ドット調整したい、など)をすることもありました。一人で、限られた時間の中で開発するには、とにかくスピードが命で、多少残念でも一発勝負で書き上げるなど、今思いおこせば無茶苦茶な作業をしていたことを思い出しました(笑)

UIについては正直ど素人&その場のノリでデザインして反映を繰り返していたので、色以外はあまり統一感がなく、個人的にはイマイチだと認識していまして、 普段触れる市販のゲームや身の回りにあるプロダクトのUIに触れるたび、 やっぱりプロのUIデザイナーさんのシゴトって偉大なんだなと実感しています。

フォントについては最初からドットフォントを採用したいと考えていましたが、 なかなかベストなものが見当たらず、ツイッターでみかけたひっくさんという方のフォントが本作に最高にマッチしたため、使わせて頂きました。 悲しいかな、私の技量ではドットバイドットで綺麗に使いこなすことができず申し訳ないのですが、それでも作品全体の雰囲気を演出する上で、とても大きな役割を果たしていただいているように思います。

ひっくさんのサイト:http://www17.plala.or.jp/xxxxxxx/00ff/

 

 

 

Isao:

とてもストイックなお話ですね。私も作曲は自宅のスタジオで行いますが、お風呂に入っているときに芸術的なアイデアが浮かぶのは本当にわかります。確か、ジブリ作品の作曲家で有名な久石譲さんも同じだったような。 私を含め、図書館やカフェで作業される方も多いとは思いますが、電車の中でもドット絵グラフィックを描いて作業されている方は珍しいでしょうね。時間を有効活用されていて素晴らしいです。 もし海外の皆さんが日本へ旅行に来られた時、日本の電車に乗りながらグラフィックを描くことに挑戦してみてください(笑)

そして実は、『SOULVARS』作中で、全てのシーンにおいて私たちのBGM素材を使っていただいております!どのような流れでSOUND AIRYLUVSのBGM素材集を知って頂き、全てのシーンに取り入れようとされた経緯などもお聞かせていただけますでしょうか?

 

ジーノ:

UnityのAssetStoreでBGM素材を探していたときに出会ったのがきっかけでした。いろいろな楽曲を聴き比べる中で、本作のような現代社会に近い世界観に合うBGM素材は少なく、おおむねファンタジーかサイバーパンクの両極に偏っている印象でした。その中において、楽曲のクオリティも、選択肢の多さも含め、統一感を持って本作の世界観にあったコーディネート出来そうな印象を受けたので、全シーンSOUND AIRYLUVSさんの作品で統一しようと決めました。 EDMやサイバーパンクのハードな要素を備えながらも、要所でメロディアスなサビを奏でる楽曲は、どれもSOULVARSの演出したい世界観にマッチしていたのも決め手でした。

おそらく、SOUND AIRYLUVSさんの楽曲を使ってる皆さんがそのように感じる、もしくはBGM素材あるあるかもしれませんが、すべての楽曲がSOULVARSのために書き起こされたような錯覚に陥るほど運命的なものを勝手に感じています(笑) ただ、プレイヤーの方でも実際にそうおっしゃる方もいるのであながち錯覚ではないのかもしれません(笑)

 

 

Isao:

ありがとうございます! 『SOULVARS』内でBGMが使われていた、個人的もお気に入りのシーンは、通常戦闘曲『Eyes on Darkness』です!。この曲は昔にリリースしたものですが、初公開した当時のSNS上ではあまり人気が無くて、「個人的には結構頑張って作った曲なのに認めてもらえないんだなー(泣)』ってショックを受けてたのですが、今作中でガンガンに流れてましたね!これがとても嬉しかったです。

 

ジーノ:

本作はソウルベアラーという特殊な運命と能力をもった者たちが、そのマイノリティな属性を抱えるがゆえに、関わる組織や人間、仲間たちとドライな関係性の中、孤立無縁な状態でハードなシゴトの依頼をこなす、といった物語の側面があるのですが、 まさに通常戦闘曲『Eyes on Darkness』は、ハードなイントロ、不安なAメロ・Bメロ、哀愁を漂わせるメロディアスなサビ、というようにとてもマッチした楽曲になっているように思います。 なのでこのBGMのタイトルは私のなかで勝手に「ソウルベアラーのテーマ」になっています(笑) 思うに、楽曲というのは単体としても当たり前に価値を生むものだと思いますが、 BGM素材というプロダクトの特性上、それがどのような作品(物語や視覚的な演出)と組み合わさるかで、その楽曲の魅力が何倍にも変わってくるのかなと思います。少なくとも私の中では最高の一曲になっています! 実際ユーザーさんの人気も高いです。

 

chara

 

Isao:

なるほど・・とても勉強になります!そこまで考察してBGMを選んで頂いてくれていたことに感激です。
また、近未来の世界観に合わせて、 "Vol.9 Stealth Code Sci-Fi Game Music""Vol.11 CYAN TRIBE 2097 Game Music"の楽曲をたくさん採用されていました。マップ移動では『Sonar』、『Anonymous』そして『Savage Junkies』が使われていましたね。特に『Savage Junkies』は、本当にこの素材曲は使いどころ難しいだろうなぁって思っていましたが・・これが、かなり良い感じに馴染んでいて驚きましたよ(笑)。  

 

 

ジーノ:

SOUND AIRYLUVSさんの楽曲はほぼ一通り聴き比べたように思いますが、
特に"Stealth Code Sci-Fi Game Music "と "CYAN TRIBE 2097 Game Music "は本作の世界観にマッチするものが多く、重宝しました。
"Stealth Code Sci-Fi Game Music "は現代を舞台にした本作にぴったりで、"CYAN TRIBE 2097 Game Music "はサイバーパンクではありますが、本作の現代の世界観もやや近未来的な要素があるため、一部の楽曲が十分マッチしました。

マップ移動や通常のエリア探索で使用している『Sonar』は荒廃した街並みをあてもなく彷徨い探索する場面において、楽曲名通りうまくハマってくれたように思いますし、もしかしたら一番最初に採用が決まった楽曲かもしれません。

『Savage Junkies』はハードなダンジョン探索にピッタリの緊張感を演出してくれました。本作は現代のコンクリートで鉄筋の建築物がダンジョンであることが多いこともあり、その点においても金属音を想像させるような高音が奏でられる本楽曲は本作のダンジョンにピッタリだったように思います。 『Anonymous』は物語の終盤で真相に近づいていく過程をいい感じに演出してくれました。 他のVolもあわせた上で、もっとよい組み合わせや選択肢はあったのかもしれませんが、統一感も含め、個人的には満足しています。

 

Isao:

あと、これもネタバレになるので、言っていいのか分からないのですが、突然にハイウェイゲートバトルが始まったとき、本当に笑ってしまいました。 「いきなり始まるんかーい!!」っていうツッコミと、「”Dark Engel 2097” 使い方最高すぎる!」という感想が同時に吹き出ました(笑)。あの曲の入り方、めちゃくちゃカッコよくないですか??

 

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ジーノ:

『Dark Engel 2097』のイントロが、急に放り出される演出とあいまってバッチりハマったようにおもいますので、作曲者さんがそう思っていただいたのであれば大成功ですね(笑)"CYAN TRIBE 2097 Game Music"のなかでも一際カッコよくて、どこかで絶対使いたいとおもっていたのですが、バッチリ使い所があってよかったです!

 

Isao:

ありがとうございます! SOUND AIRYLUVSの楽曲ファンの皆様にも、存分に遊びごたえのある戦闘システムと、RPGシナリオを両方楽しめる『SOULVARS』をぜひプレイして頂きたい思います!最後になりますが、初めてこれからゲーム開発を頑張ろうとしている方や、ジーノ様ご自身の今後の展望などをお話しできる範囲で聞かせていただけますでしょうか?

 

ジーノ:

私も本作が初めて世に出したゲーム作品なので、あまり偉そうなことはいえないのですが、まさにこれから初めてゲームを作ろうとされている方に対して、ということであれば。。

先程まで、楽曲を作品にコーディネートする際の背景を述べてきましたが、実はどちらかというと楽曲が作品の世界観やストーリーの道標になってくれていたことも多分にあったのかなと振り返ります。いまいちストーリーや演出が決まらず停滞する時、大体楽曲がそれを打破してくれたように記憶しています。なので、進捗が思わしくない時はいろいろな楽曲を聴き比べ、時には楽曲に併せてシナリオや演出を調整していくのは、個人でゲーム開発する上ではアリなのかなと思います。

大作であれば、コンセプトやシナリオに併せてオーダーメイドで発注するため、そういうことはあまりないのだと思いますが、多くの個人開発者の場合は自分で楽曲を作るか、おかねをかけてオーダーメイドで発注するかしない限り、多くの人はBGM素材の力を借りることになると思います。 一方で、そこには既にさまざまな世界観が込められており、それらを聴き比べたり、組み合わせをコーディネイトする中で、その楽曲の持つ世界観が開発を助けてくれるというのは、むしろ個人開発でBGM素材を使わせてもらう際の特権なのかなとも思いますので、上手に活用することができるとよさそうです!

私自身の今後の展望はまだ多くは語れないのですが、本作をより多くの人に届けられるよう、また続編もふくめてさまざま準備を進め、それらを然るべきタイミングで皆様にお届けできるよう頑張っていきたいとおもいます。 開発ツールの高機能化や一般化に伴い、これからさらにインディゲーム開発は一層盛んになっていくようにも思いますので、それにあわせてBGM素材のニーズもより高まってくるようにおもいます。これからも素敵な楽曲をよろしくお願いします!

 

Isao:

本日はありがとうございました!これからも皆さんのニーズに応えられるようなBGM素材制作をやっていきます。 ここまでお読み頂いたゲーム『SOULVARS』ファンの皆様、『SOUND AIRYLUVS』ファンの皆様も本当にありがとうございました!

 

SOULVARSをプレイ: 

Apple Store (iOS): https://apps.apple.com/app/soulvars/i...

Google Play (Android): https://play.google.com/store/apps/de...

 

Release date (Japan): 2022, January 8th

Release date of the English version: 2022, April 17th

 

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